夜のプールにふたりだけ*

 ここは夜の学校。プール。水面に月が映っている。静かな夜だ。1人の生徒が水面を見つめていた。その視線の先にはもう1人、生徒が泳いでいた。
「中也ーっ、あと少し!」
 ストップウォッチを片手に水面を見つめる生徒、太宰が声をあげる。彼らは、水泳部の部員である。太宰の掛け声を聞いたのか、中也と呼ばれた生徒の泳ぐスピードが気持ち速くなる。段々ゴールが近付いてきて、ゴールする。すかさずストップウォッチを止める太宰。
「……どうだった?」
泳ぎ切った後で、息が荒い中也が聞く。
「0.2秒更新。やったね」
「やっと、ここまで来たな」
 1週間後に控える大会の為に、彼らはこっそり練習しているのだ。
「なぁ、太宰」
「なんだい?」
「本当に手前は、大会出ないのか?」
「あぁ、そうだよ」
 太宰は地元では有名な、水泳選手だった。大会でも多くの競技で優勝争いが出来る程だった。それが突然、大会に出ないと云いだしたのだ。周りは勿論反対したが、彼の意思は誰にも変えられなかった。今ではマネージャーとして部に残り、選手の管理や指導に励んでいる。
「何故なんだ?」
「前にも云ったけど、君のせいだよ。君の才能は、私を遙かに越えているんだ。君の泳ぎはとてもうつくしいんだよ。分かったかい、中也?」
「それは聞いたが、どうにも納得できないんだ。俺の今のタイムより、手前のタイムの方がまだ速い。確かに俺のタイムは伸びちゃいるのは分かってる。でも、手前が大会に出た方がいいんじゃないのか」
「だからじゃないか」
「は?」
「まだ成長途中だからこそ、その過程が見たいのだよ。うつくしい君が更にうつくしく泳ぐ様子を、見ていられるじゃないか」
「……俺の方は、手前が泳ぐ所を見ていたかったんだけどな」
「だからこうして、練習終わりに泳いであげてるじゃないか。それじゃ不満かい?」
「いつ見ても飽きねェから、ずっと見ていたいんだ」
「相変わらず、直球な口説き文句だね」
「なァ、こっちに来いよ?」
 というと中也はプールサイドにしゃがみ込む太宰の腕を引っ張った。水しぶきが上がり、太宰はプールの中へ。
「ちょっと、まだ服脱いでなかったんだけど?」
「手前の方が、俺の姿見てるんだからたまにはいいだろ」
「たまにはって、これはちょっとやり過ぎじゃないかな……」
「抱き締めて、くれよ」
「なんだい、恋人モードかい?」
 太宰は濡れた服のまま中也を抱き締めた。背中に中也の腕が回ってくる。暫く抱き合った後、そっと腕を離した。
「いきなりどうしたのさ」
「褒美をくれよ、太宰。今日はタイム伸びただろ?」
「何がいいの?」
「太宰が、欲しい」
 ――――そして、水面に浮かぶ影が重なった。

「あっ、んっ……、や……っ」
「なぁに、いつもより感じちゃって」
 中也の胸の突起に触れながら太宰が云う。中也は普段より、明らかに感じていた。そういう太宰もいつもと違う中也の姿に、興奮を隠せない。
「今日は中也がシて欲しいようにシてあげる。ご褒美だものね。どうして欲しい?」
「もっと、さわって」
「何処を触って欲しいの?」
「ここ……」
 中也は人差し指と中指で胸の突起をはさんでみせた。
「今日は乳首がいいんだね。わかった」
 そう云うと太宰は片方の突起を口に含んだ。舌で丹念に可愛がってやる。時々水面が揺れて水がもう片方の突起に触れるが、その刺激すらも感じてしまうらしい。中也が身を捩り、もう勘弁してくれと云わんばかりに太宰に抱きついてきた。
「……刺激が強すぎたかな?」
「すっごく、きもちよかった」
 うっとりとした表情で中也が云った。
「じゃあ、もう片方もやってあげる」
 もう片方をしゃぶる。口内でコロコロ転がすように触れてやると、中也の腰が揺れているのが分かった。腰を太宰に押しつけてくる。
「今日のきみは、すっごくえっちだね」
「そういう、きぶんなんだ」
「違うでしょ、私に近付けたのが、嬉しかったんでしょ?」
 太宰がそう聞くと、照れたのを隠すように中也は太宰に口付けた。
「嬉しくて興奮するだなんて、きみはまるで犬のようだね」
「はっ、それをいうならてめぇもおなじ、だろ」
 俺に早く追いついて欲しいくせに、と中也は続けた。
「タイムが縮む度に君のこんな姿を見れるなんて」
 これだからやめられないのだ。
「だざい、そろそろ欲しい」
「ちゃんと慣らしてから、だからね」
「いいから、はやく」
「駄目。そこは譲らないから。中也のためでもあるんだから」
「わかった。はやく」
 水着の上から、中也自身に触れてみる。緩く立ち上がっているのがわかった。
「脱がせられないから、自分で脱いでよ」
 と云うと、素直に中也は従った。脱ぎにくそうにしながらも、脱いでみせた。水面が揺れる。いつもと違って見えにくい。見えにくい分、中也を感じようと身体を密着させる。太宰もズボンと水着を脱ぎ、自身を取り出した。
「一緒に気持ちよくなろう?」
 中也と自分を扱きあげる。中也の口からは嬌声が溢れ出た。そして、脚を太宰の腰に絡め、抱き締めた。
「も、イく……っ、」
「いいよ、イって?」
 太宰が許可を出したとたん、中也は白濁を吐き出した。水の中でも分かるくらいに、中也はどろどろだった。それを後孔に塗りつける。媚肉がヒクヒクと収縮するのが分かる。くるぅりと円を描くように孔を広げていく。指の本数を段々増やしていく。
「だざっ、も、いいから……っ」
 先程から我慢しているのでしびれを切らしたのか、中也が催促する。
「じゃ、挿れるよ」
 指を引き抜き、中也の後孔に自身を添え、ゆっくり挿入していく。
「ン……っ、」
すべて挿れ終わると溜息が零れ出た。感じ入っている中也と目を合わせる。幸せそうだ。
「動く、よ?」
「いい、ぜ」
 律動を開始する。バシャバシャと水面が揺れる。
「ンっんっ、ん……っ、」
 律動を段々深くしていく。
「あっだめ、みず、はいっちゃう……っ!あっ……あァ――っ」

 タオルで濡れた身体を拭きながら、恋人に話し掛ける。
「なぁ、今日は後処理も、してくれないか……?」
「君が! そんなこと頼んでくるなんて、珍しいね」
「それで、やってくれるのか?」
「勿論。おいで」
 中也は太宰の首もとに抱きついた。
「この体勢でやるのかい?」
 こくこくと頷く中也。
「まったく、しょうがないなぁ」
 後孔に指をつっこみ、白濁をゆっくりかきだす。
「ねぇ、なんで今日はこんなに素直なの?」
「手前のせいだ」
「私、何かしたっけ」
「今日はあと少しって掛け声が聞こえて、それで頑張れたから。いつもはそんなこと云わないだろ」
 云われてみれば、今まで掛け声は掛けてこなかった。
 ――――タイムを縮めるのは案外簡単なのかもしれない。

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